書店で物凄い画の漫画を発見してしまった。『学園クイズ』という漫画のようだが、眼の大きさが、従来の少女漫画の文法からすら逸脱して。いくらなんでもでかすぎやしないか。『ガラスの仮面』の北島マヤよりもでかい。


キャラの眼の大きさ。アメコミだとどうなるかと言えば、普通の人間の眼の大きさに近くなる(これは『バットマン』のアメコミ版から引用したもの)。実際は西洋人より眼が小さい日本人の描くキャラが西洋人の描くそれよりも大きいのはなぜだろう。これを西洋人の顔に対するコンプレックスの表れで片づけるという方法もあるかもしれんが、それも紋切り型すぎる気もする。


眼が大きく描かれだしたのは一体いつ頃なのだろうか。戦前のキャラの眼は既に大きかったのか?それとも大きくなったのは戦後からなのか?残念ながら人間のキャラは見つけることができなかったが、戦前の漫画『のらくろ』と『ロボット三等兵』の両主役は眼がでかい。終戦直後に出版された手塚治虫の『新宝島』のキャラも眼がでかい。しかし、戦前に眼がでかいキャラがいたとなると当然、手塚治虫がその始祖ではないということになる。


誰が始めたかは分からないが、潮流を作ったのはやっぱり手塚治虫なんだろうと推測する。ディズニー作品に出てくるキャラの眼は比較的大きいが、手塚治虫はディズニー映画から随分影響を受けていたようだ。


手塚治虫の影響力は相当に大きかっただろうから、それで眼がでかいキャラが一般化したことは十分にありうる話だ。これはそのままアニメにも言えるだろうと思う。手塚治虫は国産アニメを作ることに血道をあげていたのは有名な話だ。


あ、その手塚治虫の作品に対抗するように出てきたのは「劇画」なんだろうな。しかし、今はかなり細々って感じだよな、劇画って。結局漫画に駆逐されてしまった。


そもそもコマにおけるキャラの描き方は、今と昔では全然違う。今と昔でざっくり分けたのはどこで描き方が転換されたのか分からないからです。昔はキャラの全身がコマに収まるように描かれていたが、今はバストアップで描かれるのは全く珍しいことではない。


漫画表現における、顔をアップで描く技法の始まりは鋭意調査して明らかにしていきたいが、キャラがバストアップになれば顔が占める面積は大きくなるわけで、眼を大きくするのに一役買ったであろうことは想像に難くない。


メインストリームのアメコミやバンド・デシネではまだ眼のでかいキャラは少ないが、この眼をでかく描く手法はじわじわ海外の作り手に浸透している。『スコットピルグリムVSザ・ワールド』は、『サルまん』を読んで描かれただけあり、かなり日本の漫画風の眼だ。『サルまん』含め、日本製の漫画やアニメがどれだけ外国で楽しまれているかを考えればそれも当然の流れなのかもしれないけど。


数年前に講談社が創設した、海外の漫画家の優秀な作品に授与されるモーニング国際新人漫画賞という賞があったが(今もあるのか?)、私が読んだの受賞作の一つは明らかにキャラが「日本風」だった。
アニメで言えばアニメ専門チャンネルのカートゥーンネットワークで放映されていた『BEN10』というアニメの主人公の眼は、従来のアメリカ製の作品に比べるとかなり大きい。


でも、個人的にはキャラの造形には多様性があってほしいから、眼がでかいキャラばかりが世界で生産されるのはどうかなと思う。(U)

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