社長さん、銀行員の言うことをハイハイ聞いてたらあなたの会社、潰されますよ!

この本の著者は群馬銀行に10年間在籍した後、現在、銀行取引アドバイス及びリスクマネジメントによる企業防衛をおこなっており、非常に具体的な内容がかかれており、銀行と関わる企業の社長さん、会計事務所の所員にとっては非常に役立つ興味深いものでした。その中から、何点かを抜き出してまとめたいと思います。


1.融資の仕組み

まず、融資の仕組みを知っておく必要があります。融資が出るか出ないか、その可否を決定する際の「融資の原則」は①使途、②財源、③保全、④期間、⑤レート。この5つ。
この中でも優先順位があり、①~⑤の順番で優先順位がある。「使途」、「財源」、「保全」の3つまでは重要な要素でそのほかの「期間」と「レート」に関しては銀行も泣けるようです。


2.保証協会付きを勧めるわけ

プロパーの融資は万が一のとき銀行自身が責任を追わなければならないが保証協会の保証がついていれば万が一のときでも銀行は保証協会から返済を受けることができ、損害を少なくすることができます。しかも、去年からの緊急融資などで保証協会の保証が100%になったため、各銀行はこぞって、保証協会付きの融資を勧め、借換えなどが多く行われている状況にあります。
さらに、銀行員にとっても、保証協会付きだと銀行内でのポイントが1.5倍も多くもらえるそうです。そのため、銀行員は保証協会付き融資を勧めてくるのです。会社としては金利のほかに保証料を払わなくてはならず、プロパー融資に比べて不利ですが、中小企業でプロパー融資を引出すには業務内容がよくてはならず、現在は銀行が勧めており借りやすい保証協会付きでの融資がほとんどの状況です。


3.銀行への対応

銀行員はかなり冷たい対応を平気でしてきます。何の予兆もなく、でるはずの追加融資がでないといってきたりする。しかも、最近はその兆候が強くなっているそうです。
また、口約束で倍にして折り返すなどといっていても、「社長、急に融資の状況が変わって、本部がどうしてもOK してくれないんですよ。」でおしまい、なんてこともよくある話だそうです。契約はすべて口約束ではなく書面で行っておく必要があるようです。

また、「わかりました」「いいですよ」はOK とは限らない。あなたのいっていることは、わかりました、いいですよ、という意味で本当にOK なわけではない。
このような様々な冷たい態度を銀行員は平気でしてきます。しかし、かといって、銀行との関係を切るわけにもいかず、うまく関係を保っていくことが必要となってきます。ですから普段からコミュニケーションをとっておくことは大事です。

銀行が金利の値上げなど会社にとって不利な要求をしてきた場合には、とにかくゴネるべきです。なぜ、そうなるのか、納得がいかない、説明してくれ、などといって、普段からすぐには言いなりにならない会社という態度をしておいたほうがいいです。そうでないと、銀行員に簡単につけこまれてしまいます。

それから、融資を出す目的で預金を拘束したり、定期預金や定期積立金の固定性預金を条件にすることは「歩積み両建て」といって原則やってはダメなんです。しかし、実際には往々にして行われており、借りざるを得ないときにそれを言っても始まらない状況にあります。もし、借り入れた際に預金の質権設定契約を融資条件としてあげられていた場合にはその後の交渉の余地はありませんが、預金の質権を取られていなければ多少の交渉余地があります。かなり難しいですが、運転資金がなくなってどうしようもない、一部使わせてくれと明確に言うことで伝わる場合もあります。また、リレーションシップバンキング(中小企業に適時資金提供をして成長・再生をサポートすること)の話をしてみるのも有効です。また、このままだと危機的な状況に陥るというのであれば金融庁や本店に直訴するのも手です。それから、質権がとられていなければ相殺される前に解約するのも手です。原則として借入している銀行に預金は預けておくべきではありませんから。

また、融資の申し込みをして1週間しても返事がなければ穏便に乗り込んで、どうなっているのか、ダメならダメとはっきり言ってもらわないと困るということを強調して最悪の事態を避けるべきです。というのも、銀行員は最初から「無理です」とは言いません。「検討します」といって社内に持ち帰るのですが、本当に検討している場合とそうでない場合があります。もし、1 ヶ月もたって断られてにっちもさっちもいかなくなったら、銀行に要請した日と借入申込書に記入されている日付にタイムラグがあるか確認してください。タイムラグがあればそこを徹底的についていくしかありません。早くわかっていれば他に手を回すことができた、返答がないためにそれができなかった、とまで言っても構いません。それでも、銀行が渋るようでしたら「金融庁はどう判断するか・・・」などと言って銀行を揺さぶってください。本当に銀行に遅延の非があるなら、銀行はしぶしぶ出してくるようです。銀行は金融庁には頭が上がらないのですから。


4.もしも、返済できずに放置していたら・・・

まず、矢のような催促が3ヶ月続きます。1日3回くらい。ほとんどの人はここでまいってしまいます、1週間くらいで。そして、銀行に来てくれといわれ、行くと「どうなっているのか?」「いつ返すのか?」となるわけです。それでも銀行に行かなければ保証人と借主に内容証明郵便が送られてきます。さらに無視をすると、三ヶ月後くらいに「期限の利益の喪失届」という内容証明が届きます。この段階で保証協会付融資は事故報告があがります。3 ヶ月経つと電話はぴたりとやみます。次の3ヶ月は形式的な連絡だけ。担保があれば6 ヶ月で強制競売にかけるケースもあります。保証協会付きの場合は6 ヶ月経つと代位弁済手続きに入ります。最初の3 ヶ月が催促で大変ですが、そこを過ぎれば楽になります。無担保の場合はサービサーに売却されます。サービサーの債権の購入金額は実際の金額の8%~10数%くらいの額です。それを見越して15%くらで価格交渉をしてみましょう。
また、担保物件が強制競売で第三者に売却された場合には第三者に賃借料を払ってそのまま住み続けるという方法もあります。(リースバック)


以上、銀行に対しての対処方法を知っておくには非常に役立つ一冊でした。


2011/6/15(S)

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