国敗れて霞ヶ関あり を読んで

今回、読んだ本は若林亜季著、「国破れて霞ヶ関あり」という本です。この本は国の税金が天下り団体にいかに流れているかを詳しく書いており興味深いものでした。

‘09年度に麻生太郎首相が日本版グリーン・ニューディールを掲げ、エコな公共投資に力を入れました。省エネ改修住宅の税額控除では最高200万円が確定申告で税額控除することができるほか、固定資産税が1/3減額されます。また、省エネ家電への買い替えによる補助金(エコポイント)やエコカー減税(自動車取得税、重量税の免除等)、エコカー補助金など様々な補助金、税額の優遇措置が設けられました。

‘09年度の当初予算は1兆2000億円でしたが、一昨年のリーマンショック以来の景気後退に対応するための刺激策として補正予算で一気に1兆6000億円が積み増しされ、環境を錦の御旗に各省が予算のばら撒き合戦を繰り広げました。一般消費者には上記の補助金などが記憶に新しいと思いますが、実はこれ以外にも農機具を最新のものに買い換えると「二酸化炭素排出量が減る」ので半額補助(農水省)、「原発は環境に優しい発電」で予算増(経産省)、「スクール・ニューディール」の名の下に全国の小中学校に地デジ・パソコンを緊急配備(文科省)、「薄型テレビはブラウン管より電機を食わないグリーン家電だから買い替えに補助金をだす」(総務省)とやりたい放題でした。

さて、このばら撒き予算を取りまとめたのはどうやら経済産業省のようです。なぜなら、経済産業省から環境・エネルギー技術を扱う法人への天下りが多いからです。中でも最大のものは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で’08年3月現在、30名ものOBが天下っており、うち5名が役員です。霞ヶ関の官僚としてはこの天下り団体にどうしてもお金を落としたいと考えます。そして、そのためのシステムを作っていく。

たとえば’08年に二重窓の断熱リフォームやエコ・キュートという蓄熱空調システムに国からの補助金が下りるというものがありました。この補助金は経済産業省が「二酸化炭素の削減に効果が大きい」として行う「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」の一環として行われ、このエコ・リフォーム補助金交付の窓口がNEDOでした。NEDOエコ・リフォーム補助事業の予算は’07年実績が15億円で、’08年は20億円に増額されました。公益法人への天下りリストの’05年版と’06年版を比べるとNEDOへの天下りは補助金増と歩調をあわせるように、10人から30人へと激増していました。さらに、両年の経済産業省の天下りリストを見比べると、この補助金の関連業界への天下りが軒並み増えています。

このように、一事が万事、何か予算が増えるときにその恩恵は直には消費者に行かず、一度、天下り団体を通してからというシステムが官僚によって作られてきており、そこでなんらかの手数料が取られていくというのがこの国の現在の仕組みのようです。こうした天下りをやめさせるために小泉内閣では「聖域なき構造改革」を掲げましたが、この構造改革では結局、郵政の民営化しかできず、当時の特殊法人は結局、独立行政法人として名前を変えて存続し、天下りがなくなることはありませんでした。

さて、一昨年の選挙で民主党が大勝利をし政権交代が実現しました。そして、国家戦略室なるものを立ち上げ、行政刷新会議も始動し始めました。事業仕分けなるもも行い、おおいに国民の注目を集めました。いくつかの事業仕分けで予算の削減はでき、チェック機能としては一定の評価はできたものの、事業仕分けには強制力がないという点もあり、一度削られた予算は、名称や用途を多少変えてまた要求されたりしており、抜本的に変えられたとは言いがたい状況かと思います。

民主党が目指した官僚主導から政治主導への切り替えも、官僚排斥となり機能不全に陥り、普天間問題で鳩山内閣から管内閣に変わるも、消費税発言のぶれ、震災後の対応の不手際や自身の進退問題などで支持率は下がる一方。日本国の未来が描けない今の政治には残念としか言いようがありません。

2011/06/16(S)

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