第6回勉強会の内容 ①出入国管理法について
出入国管理法について
2011年12月2日
鴻鵠の会;勉強会
レジュメ作成者:内尾
1.在留資格
① 在留資格とは
・在留資格とは、外国人が日本に在留する間、一定の活動を行うことができること、あるいは一定の身分または地位を有する者としての活動を行うことができることを示す、「入管法上の法的資格」のこと。
・一般に、世間では「ビザ」と呼ばれ、正式なビザ(=査証)と混同される。査証は、上陸手続に必要なものとして入国前に海外の領事館等で発給され、上陸の許可を受けると用済みとなるもの。
② 種類
・27種類ある。
→外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、家族滞在、特定活動、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
・太字で表示されている在留資格が、一般的なもの。
・永住者以外は全て在留期間が設定されている。
③ 在留期間の更新、在留資格の変更
・一般に、在留資格には期間が定められており、期限を過ぎても現在の活動を続けることが明らかな場合は、在留期間の更新を申請することができる。
(例)技術者としてシステム会社に引き続き在籍し、仕事をする場合。
・事情の変化によって、更新後に当該活動を行わなくなった外国人は、現在行っている活動が上記の27種の活動に該当するのであれば、在留資格の変更を申請することができる。
(例)日本人配偶者と離婚し、親権を持つのが外国人親の場合。
④ 法的性格
・在留資格は、外国人に許される在留活動または在留中の身分・地位を入管法にあらかじめ定め明示するものであるから、視点を変えれば、外国人はこの27種類の在留資格のいずれかに該当しなければ、日本に上陸し在留することはできない。
・つまり、特に技術を要しない労働(単純労働)を行うことを目的として上陸・在留の申請をしても、該当する在留資格がないので、上陸・在留も許可されないことになる。
2.退去強制
退去強制は、国家の意思によって行われる行為であるが、何らの基準も規定もなく国家の恣意によって行われるのは相当ではなく、外国人も安心して在留することができない。入管法では、24条に具体的に退去強制事由を列記し、出国命令対象者は出国命令により出国させることとしている。
① 種別
・入管法の規定に違反して違法な状態で在留している外国人
(例)不法入国者、不法残留者
・適法に在留している外国人で、在留中の活動・行為に好ましくないものがあり、引き続き在留させることが相当でないとされる外国人
(例)刑罰法令違反者、売春やそれに関する業務に従事した者、不法労働に関係した者
② フローチャート
省略
3.入国管理法の問題点
① 審査基準が公表されていない
・行政手続に関しては、行政手続法という法律が存在しており、次のような定めがなされている。「行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(審査基準)について、当該許認可等の性質に照らしてできる限り具体的にこれを定めるものとし、行政上特別の支障があるときを除き、この審査基準を公にしておかなければならない。」(第5条)
・しかしながら、「外国人の出入国、難民の認定などに関する処分や行政指導」は、第3条の規定により、この審査基準の公表から除外されている。
・従って、審査基準はあってないようなものであり、極めて曖昧模糊とし、かつ入国管理局の恣意的な判断によって申請の許可不許可が決まっている部分があると言わざるを得ない。
・在留資格取得の要件を全て列記するのが無理だとしても、何らかの基準は法律に盛り込まれる必要があるのは明白である。
② 処理期間が長い
・申請から結果が出るまでの期間が長く、特に永住許可申請については1年以上かかることも珍しくない。
・在留期間更新申請については、近年処理期間の短縮が図られているが、それでも十分な早さだとは言えない(通常、更新の標準処理期間は約1ヶ月)。
4.今後の入国管理行政の展望
① 新たな分野の活動への在留資格の付与
・労働人口、特に第一次産業の労働人口は明らかに減少の傾向にあり、これに歯止めをかけるには農業や漁業などの分野に在留資格を新設する必要があると考えられる。
② FTAによる人材受け入れの活発化
・現在、インドネシア、フィリピンから看護師及び介護士を受け入れているものの、正看護師、正介護士として日本に在留し続けるには、日本語による各試験の合格が条件となっており、在留資格の取得は極めて厳しい。他の先進国の基準は、日本よりもずっと緩いものであり、日本に来る人材がいなくなる危険性もある。
・看護、介護は特に高度な日本語に対する理解が必要である以上、外国人にはそぐわないという考え方もできる。よって、比較的平易な日本語しか理解しない者を看護、介護とは別の分野に振り分け、看護や介護は日本人又は日本人と同等の日本ご理解能力のある外国人に任せるということを検討する時期が早晩来ると予想される。