法人設立後の費用

【 設立後にかかる費用 (固定費+運転資金) 】
 
 さて、会社を設立したとしてその後、具体的に毎月どのくらいの費用がかかるのかを把握しておかなければ会社を設立しても運用していくことはできません。そのために具体的に把握をしておいてほしいものとして「固定費」と「運転資金」の2つがあります。

①    固定費

 固定費とは売上高に関係なくかかる費用のことを言います。具体的にいいますと、従業員(正社員)の給料・役員報酬、法定福利費、福利厚生費といった労務費や交通費、通信費、事務所の地代家賃、水道光熱費などはどんな小さな会社でもかかってきます。特に従業員の給料や事務所家賃は設立当初においては大きな負担になってきます。
例えば、月10万円の家賃の事務所を借りて、月20万円の正社員で雇っていれば、自分の役員報酬を支払わなくても最低月30万円は毎月現金が出ていくということです。自分の生活費も必要ですから役員報酬を月30万円と設定すると毎月60万円の現金が流出すると考えてください。
さて、ここで大事になってくるのは毎月60万円の現金が出ていくということは、利益を出すには毎月60万円以上の粗利を稼ぎ出さなくてはならないということになります。そのため、会社を運営していくには毎月の損益分岐点売上高の把握が必要であり、設立前に大まかな事業計画の作成をしてあらかじめ目標を定めておくことが非常に大事になってきます。(事業計画のページを参照)
また、設立当初は思うように売り上げが上がらない可能性もあります。もし、固定費が月60万円なのに売上げが0円だったら、半年間で360万円の現金が会社から出て行くことになるのです。つまり、資本金300万円で設立したら売上げが0円なら半年間もたないことになります。
これが、最初は従業員を雇わず自宅兼事務所で開業、役員報酬も月20万円に設定すると毎月の固定費は20万円に+交通費や通信費のみで1年で240万円強となります。資本金が300万円なら当初の設立費用を払っても、まだ、残金があります。この間に売り上げ拡大に努めて、月次ベースで利益を獲得できるようにしていくというのが非常に大事になってきます。

②運転資金
 
固定費についてはなんとなく毎月費用がかかるなぁ、と考えるのは容易ですが、運転資金についてまで具体的に考えていない場合もあるかと思いますので要注意です。では、まず運転資金とは何か?ですが、式で表すと下記のようになります。

運転資金=売掛金+棚卸資産―買掛金

もう少し具体的に計算をしてみましょう。たとえば、ある商品を5千円で仕入れてそれを1万円で売る商売を始めたとしましょう。1ヶ月200個売って月商200万円だとします。仕入れは100万円ですから1ヶ月で100万円の利益になります。もし、上記①の固定費が0円だったと仮定したら、1ヶ月で100万円の粗利を稼げたわけですから手元に100万円の現金が残るということになるか・・・というと実はそうはなりません。なぜかというと、現金が手元に入ってくるまでにはタイムラグがあるためです。
では、そのタイムラグとは何かを3つに分けてみていきたいと思います。
そのタイムラグとは上記の売掛金、棚卸資産、買掛金で発生するのですが、ここでは売掛金を例に挙げて説明したいと思います。

【タイムラグ -売掛金- 】

消費者相手の商売の場合は現金商売の場合もありますのでこの場合は売掛金は発生せずタイムラグは生じません。しかし、会社相手の販売の場合は当月分の売り上げをまとめて計算して、翌月末入金とか翌々月末入金という場合が多々あります。消費者相手の販売でもカード支払いのためカード会社からの入金が翌月や翌々月の入金になることがあるかと思います。この翌月、翌々月入金となると一体どういうことが生じるのか?を最初の例にあてて考えて見ましょう。簡単に考えるため毎月200万円の売上高で仕入れは100万円とし、入金が翌々月だったとします。
1ヶ月目、仕入れが100万円なので100万円の現金がなくなります。売上げは200万円で粗利は100万円ですが、売上げの入金は翌々月なので初月は入金0円でトータル100万円の現金がなくなります。
 2ヶ月目、仕入れは同じく100万円で100万円の現金がなくなります。売上げは200万円で粗利は100万円ですが、売上げの入金は翌々月なので2ヶ月目も入金0円でトータル100万円の現金がなくなります。
 3ヶ月目、仕入れは同じく100万円で100万円の現金がなくなります。売上げは200万円で粗利は100万円です。売上げの入金は翌々月なので1ヶ月目の売上げ200万円の入金がようやく3ヶ月目に入ってきてトータル100万円の現金がプラスになります。
 4ヶ月以降は粗利が100万円で現金も毎月+100万円となります。


さて、ここで注目していただきたいのは現金累計の2ヶ月目です。毎月利益は100万円出しているにもかかわらず、2ヶ月目に現金が△200万円となります。これが、翌々月入金の場合の2ヶ月のタイムラグにより生じる現金の流出額です。このタイムラグがあることにより、たとえ利益が2ヶ月で200万円出たとしてもタイムラグ2カ月分の売上高400万円が現金として入ってこないで売掛金として残ってしまうことになります。つまり、本来なら2ヶ月で利益200万円で現金200万円が増えるところが、タイムラグがあるため残ってしまった売掛金400万円分の現金が入ってこなかった、つまりマイナスになってしまったことによりトータルとして現金が200万円マイナスになってしまったということになります。

現金=利益200万円―売掛金400万円=△200万円

つまり、一時的に△200万円 になってしまうということは200万円の現金が当初から必要となる、ということです。これが、事業を始めるにあたって必要となる運転資金です。

同様のことが、棚卸資産の購入で在庫がある分は現金が出ていき、逆に買掛金で購入すれば現金がなくても支払期日までは大丈夫だということになりますので式では買掛金分はマイナスになります。

この運転資金も頭に入れた上で、当初に必要な事業資金を用意しておく必要があるということになります。

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